空席理論

空席理論

空席・・・つまり、空いている席だ。

デビューするため、ヒット曲を狙うために、空いている席を探すという視点だ。

ライバルが多く競争が激しい場所を狙うよりも、ライバルが少ない競争が激しくない場所の方が勝つ確率が高い。

これは、あらゆる競争やビジネスに言えることだろう。

最近では、ブルーオーシャン(ライバルが少ない・競争が激しくない)、レッドオーシャン(ライバルが多い・競争が激しい)という言葉まで生まれている。

小室哲哉がTM NETWORKをドラムやベースがいる4人組や5人組にせず、3人組にしたのも空席理論を考えた上でのことだ。

いつの時代にも3人組は存在する。

たのきんトリオ、キャンディーズ、かぐや姫などなど、いつもその時代を代表する3人組がいる。

小室哲哉が目をつけたのは、時代を代表する3人組の存在だけでなく、一時代に何組かの3人組が共存していたことだ。つまり、3人組ための席は1つではなく、いつの時代も複数の席が用意されていたということに目を付けたのだ。

デビュー前の83年当時、小室はその席が空いていると感じた。

一世を風靡したアリスやYMOが去った頃だったからだ。そして、3人組のアルフィーがブレイクしたばかりで、3人組の注目度は高いと判断した。

だから、TM NETWORKも3人組でいけば、空いている空席をとれるチャンスがあると思ったのだ。

ヒットを真似るだけでなく、空席を探す

人気バンドやヒット曲の真似をしたり、二番煎じを狙うという発想ではなく、そこに空席があるか?空いている席はあるのか?といったことを見極めることが必要だ。

小室哲哉は、この空席理論を「どこかに隙間を見つけて入り込む」とも言っている。

音楽業界という本棚のどこに空きスペースがあるのか。どうすれば、自分がその中に入ることができるのか。その隙間を見つける努力をする。

TRFの場合は、それがダンス・ミュージックだった。

隙間がなければ、遠回りして隙間を作る

小室哲哉がアメリカ・ロサンゼルスに拠点を移した時、「日本人のプロデューサーがハリウッドで入り込める隙間はどこか?」と考えた。

そこで、注目したのが在米中国人。

白人や黒人と比べると、中国人は文化や精神性が日本人に似ていると感じた小室は、中国人ネットワークなら入っていける余地があると感じた。

しかも、中国人ネットワークは世界的で、アメリカだけでなく、中国本土や香港、台湾などでもあっという間に広がる可能性を秘めている。

そこで、ハリウッドに受け入れられる音楽製作ではなく、中国人に受け入れられる音楽製作をし、これをハリウッド進出の足掛かりに決めた。

第一弾として、台湾を皮切りにアジアツアーを2度行い、大成功。ツアーの成功はアメリカでも報道され、記事が新聞やビルボードに掲載。そして、映画「SPEED 2」のエンディングテーマの仕事を得ることにつながった。

つまり、小室哲哉は直接ハリウッドを攻めるのではなく、在米の中国人と中国本土、香港、台湾の人たちを結ぶエンターテイメントから着手し、そしてアメリカでの評価も上げていくという手順をとったのだ。

一見、遠回りに見えるかもしれないが、遠回りしてはじめて生まれる隙間もある。